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私のアメリカを探して 1

「自然の宝石箱」
アイル・ロイヤル国立公園
Isle Royal National Park、Michigan


Timber Wolves in Northern Minnesota


 秋から冬に変わる、穏やかな季節の移り目が好きだ。カサカサと木々の間に積もった枯れ葉を飛ばしながら歩く時、冬にはまだ早い日差しのぬくもりが背中に優しい。バックパックを下ろし、疲れた体を枯れた草に横たえると、人影消えた森までが急に優しくなったような気になってくる。そんな短い秋を森の動物たちもエンジョイしているのだろうか?

Washington Harbor

 アメリカを旅しながらいろんな動物たちに出会ったが、初めて見たイエローストーンの野生のオオカミは今でも強烈に思い出されてくる。人に媚びない毅然とした態度、射すくめるようなクールな瞳。
 ミネソタからミシガン州とカナダまで広がるスペリア湖の北の端、アイル・ロイヤル国立公園にはそんな野生のオオカミが住んでいるという。この話を聞いてから、この島がボクの心の中でだんだん大きく膨らんできた。そして彼らに会いたくて、はるばるこんな遠くまでやって来ることになってしまった。


My Campsite

 アイル・ロイヤル国立公園はスペリア湖の北西部に位置する全長45マイルの細長い島で、距離的にはミネソタ州に近いが、地理上ではミシガン州になる。島に渡るには、ミシガン州北部のカパー・ハーバーか、ホートン、あるいはミネソタ州のグランド・ポーテージからボートで行くしかない。どちらの港から行くにしても、最寄りの飛行場から3時間はドライブしなければならない。しかし美しい自然と野生のオオカミに遭遇できるかも知れないという思いは、そんな距離感をなくさせた。

 島にはロックハーバーにロッジが一軒あるが、シーズン中は高くて混んでいて、とても泊まる気にはなれない。それにオオカミに遭えるチャンスは、そんな人の気配のするところではまず生まれない。ボクは初めからキャンプをするつもりで、観光客が途切れる9月の末に島に渡った。
 ミネソタ州、グランド・ポーテージから出るボートはその週が今年最後の運航だった。大きなバックパックをボートに引き上げながら、ウエノナ号のキャプテンはボクに ジョークでウインクした。「帰る日を間違えるなよ。その日を逃すと来年まで島にいなくちゃならないからね」。
 3時間の船旅から島の西側、ワシントン・ハーバーに着くとパークレンジャーが迎えに来てくれた。島に上陸したらここのビジターセンターで滞在許可証をもらい、簡単な規則の説明を受けなければならない。他の国立公園と違っている点は、飲み水は必ず2分以上沸騰させることぐらいで、野生動物に対する注意はどこも同じだ。
 観光客が消えた島はさわやかな秋晴れで、色づき始めた木々がまぶしかった。キャンプ場は島全体で36か所あるが、トイレの設備が整っているのはビジターセンターに近いところだけ。ほとんどが手付かずの自然の中にある。


Moose

 パークレンジャーの勧めで船着き場から約10マイル(16キロ)離れたフェルドマン・レークにキャンプすることにしたが、「オオカミは夏の間は森の奥に引っ込んで、人間が遭遇するチャンスはまずないだろう」と、若いレンジャーに初めから気分が暗くなるような引導を渡された。彼女はこの島に赴任してから2年が経つが、まだ実際に見たことがないという。
 そもそも、この島にオオカミたちが渡って来たのは1949年。大寒波で凍りついた湖を歩いて渡って来たらしい。その前、1900年代初めにムースが泳いで島に渡り、豊富な食物と天敵のいない土地で大繁殖した。オオカミはそれを追いかけて来たのである。島にはある時期銅を採る人たちが住んだが、そのブームが去ると無人の美しい自然が残された。
 ムースは一時期2000頭にまで増えたが、山火事や大寒波で増減を繰り返し、現在は1100頭あまりが確認されている。オオカミの数は一番多い年で50頭、平均して25頭前後がこれまた増減を繰り返しながら生息しているという(2002年冬は17頭を確認)。1996年には大寒波で多くのムース死んだが、反対にオオカミたちはその肉を食べて生き延びることができた。この島では今、自然界の掟に従い、オオカミとムースの間で秩序ある健康な関係(数)が保たれている。


Red Fox

 フェルドマン・レークまでのトレイルは、藪や森の中に続く獣道だった。いたる所にムースやキツネの糞が落ちていて、しかも藪の中から突然顔を見せては驚かせた。野いちごの赤い実に口の渇きを癒し、一歩森に入ると、いろんな種類のキノコが群生し、森の精の小人たちが歌でも歌いながら現れるのではないかと思われるほど、不思議な気分にさせられた。
 島全体がまるで美しい自然の宝石箱だった。

 湖の端にテントを張ると、誰にも邪魔されない自分だけの世界が始まる。水を汲んで沸かし、いつもと同じように陽の高いうちに夕食の準備に取り掛かる。持ってきた3日分の米を全部炊いて(今回は3泊の予定)、その日の夕食の分を残し全部おにぎりにすると、最初の仕事は完了だ。これで3日間の最低の食料は保証できた。あとは寝転んで動物たちが出てくるのを待つばかりで、この島で安心なのはクマがいないことだった。それに食べ物を盗むラクーン(アライグマ)の姿もない。その代わりキタキツネの夫婦がやって来て、すぐに友達になった。
 彼らは人間に虐められたことがないらしく、手の届きそうな近くまでやってきた。夜になると満天降るような星空になった。星の明かりだけで湖が遠くまで光って見える。ローソクの光だけでも眩しいくらいの明るさだ。ムースが水ごけを食べるために立てる水音を聞くうちに、ボクはいつしか寝袋の中で夢の中にいた。
 明け方、オオカミの遠吠えを聞いたような気がした。しかし3日間待ったが、彼らはやはり現れなかった。ボクはそれでもなぜか幸せだった。彼らと同じ土の上に寝て、同じ風の音を聞いたからかもしれない。つかの間の穏やかな秋の日はすぐに木枯らしに変わり、島は深い雪に覆われる。



Wild Mushrooms

『アイル・ロイヤル国立公園』

Park Headquarters: 800 East Lakeshore Dr., Hougton,
Michigan 49931 (906-482-0984)

■行き方:アイル・ロイヤルはミシガン州から58マイル、ミネソタ州からは18マイル離れたスペリア湖の中にあり、ボートで行くしかない。近い空港はそれぞれHougton、Michiganか、Duluth、 Minnesota。ボートはミシガン州がホートンかカパー・ハーバー、ミネソタ州はグランド・ポーテージからそれぞれ運行しているが、行き先(Rock HarborかWindigo)によって運行スケジュールが違うので事前予約が絶対必要だ。ミシガン州ホートンとカパー・ハーバー出航のボーはト906-289-4437、ミネソタ州、ポーテージ発は715-392-2100。
■ホテル& Inn
 島に一軒だけあるロッジは6月中旬から9月レイバーデーまでオープン(906-337-4993)。1泊150ドルから。この国立公園はキャンプが絶対お勧めだ。



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