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私のアメリカを探して 4
「世界遺産 アメリカのアルプス」
グレイシャー国立公園
Glacier National Park、Alberta, Canada and Montana

St. Mary Lake and Wild Goose Island
ビリングスの町で仕事を終えてモーテルをチェックアウトすると、カウンターにいたカウボーイハットの親爺が顔中に笑みを浮かべて話しかけてきた。「これからどっちへ行くんだい?」。「グレイシャー国立公園までだ」と答えると、親切に地図を広げて行き方を教えてくれた。
「おれも一度だけ行ったことがある。公園に着いたら絶対にGoing to the Sun Road(太陽に続く道)をドライブしろよ。あそこはモンタナが誇る世界一の絶景だから」

Chipmunk |
90号線を一路西へ。モンタナの空は高く青く澄んでいた。カーラジオのカントリーウエスタンのスイッチを切り、ジョージ・ウィンストンのCDに変えた。ちょっと物悲しいピアノの音が風景にぴったりだ。
しかし遥か彼方の地平線に黒い雲が現れたと思うや瞬く間に雨脚が視界を遮り、車のフロントガラスを叩いた。 ミゾーラから北へさらに2時間、ゲートシティーのウエスト・グレイシャーに着いた時には、雨は上がり、きれいな虹が歓迎してくれた。
グレイシャー国立公園はカナダ、アルバータ州のウォータートン国立公園と国境を接しており、2つの公園は両方の名を取ってWaterton-Glacier National Parkと呼ばれる、世界初の平和公園。1995年にはユネスコの世界遺産にも指定されている。Going to the Sun Roadは西側のマクドナルド・レイクと東側のセントメリー・レイクをつなぐ、公園を横断する急な山肌を切り開いた全長50マイルの道路で、高度を増すに従い、手付かずの氷河の山々がすぐ目の前に迫ってくる。まるで太陽に届きそうな高さを登りきると、大陸分水嶺と出会うLogan Pass(2025メートル)を頂点に下りになる。氷河に被われた山々と大小様々な湖が織りなす風景は、まさに「アメリカのアルプス」の呼び名がぴったりする、息を飲む美しさだ。

Prince Wales Hotel |
ローガン・パスでひと休みして雪の残るトレイルを歩くと、崖っぷちで、白い毛が半分抜け始めた哀れな姿のマウンテンゴートに出会った。長い厳しい冬が終わり春の訪れを知らせるこの脱毛だが、その姿は見るにつれて可哀想になり写真を撮るのをやめた。
この日はカナダ側のウォータートン国立公園にある有名なプリンス・ウェールズ・ホテル(Prince of Wales Hotel)に泊まることにしていた。「今夜は早めにチェックインして豪華な気分を味わうことにしよう」と決めていたのだが、カナダに入る前に少しだけMany Glacier(メニー・グレイシャー)のトレイルを歩くと、欲が出てきて頂上のIceberg Lake(アイスバーグ・レイク)まで一気に登ってみることにした。8キロの道のりだから往復しても日が暮れるまで十分時間はあるだろうと簡単に考えていたのだが、大間違いだった。ベアーグラスや黄色い可憐なグレイシャー・ユリに立ち止まってはシャッターを押した。
ところが山の天気はまたも急変して雨雲が広がってきた。先ほどまでのピクニック気分から、とにかく先を急ぐだけになった。やっと辿り着いたアイスバーグ・レイクは、6月だというのに深い雪に覆われていた。そして冷たい雨が降り出した。きびすを返し、やっとのことで車の所まで辿り着いた時には全身ずぶ濡れになってしまった。
今度はカナダの税関でトラブルにあった。グレイシャー国立公園からカナダのウォータートン国立公園へは国境の税関を通過しなければならないが、公園から一番近い税関は10時に閉まることを知らなかった。それでも10時少し前には到着したのだが、私の他に人相のあまり良くないオートバイの3人連れがほぼ同時に到着した。カナダの税関士は私たちを見て冷たく言い捨てた。「残念だがここは通れないよ。閉門時間の10分前までに書類審査を終わらなければならないんだ」。
ボクたちは11時まで開いているという税関へ向かわされた。結局100マイルも遠回りして、ホテルに着いた時には真夜中になろうとしていた。
豪華なホテルで美味しいディナーをエンジョイするはずが、空腹と疲れで昼食のあまりの固くなったサンドイッチをワインで胃の中に流し込むと、そのままベッドに倒れ込んだ。

Mountain Goats |
翌朝は強い朝日に叩き起こされた。眠い目をこすりながらホテルが全望できる丘に登ると、白い霧が幻想的に古城を包んでいた。昨日ちょっぴり意地悪だったグレイシャーは、雲一つなく晴れ上がった。
野生の花畑の向こうに雪を冠ったグレイシャーの山々が見え、岩陰から花を持ったチップモンクが現れるや、チョコンと挨拶した。花の甘い香りに鳥のさえずり、グレイシャーは春真っ盛りだった。
3日間の撮影も順調に進み、今度は逆にGoing to the Sun Roadを東から西へと帰途に着いた。
ローガン・パスで車を止めてもう一度トレイルを歩いてみると、最初の日に見たマウンテンゴートがまた目にとまった。しかし今度は一頭ではなかった。まっ白い毛皮に覆われた赤ん坊を連れていたのだ。ボクと会った後、すぐにこの子を生んだに違いない。真っ白いぬいぐるみのような子供は、しかし逞しい足でしっかりと母親について歩いていた。愛くるしいその姿に自然と「おめでとう」の言葉がついて出た。母親はあの日ボクが写真を撮らなかったのを覚えていたのか、今度はシャッターを押すまで子供とポーズをとって待ってくれた。雪どけの'太陽に続く道"を何台もの車が登り下りして行く。グレイシャー国立公園の忙しい夏が始まろうとしていた。
『グレイシャー国立公園の楽しみ方』
■行き方:モンタナ州から入る方が一般的だが、カナダのカルガリーから入る方法もある。モンタナからは、公園の西20マイルのKalispellのGlacier Park International Airportでレンタカーを借りるのが一番近道。シカゴとシアトルを結ぶアムトラックが、東と西の両駅に停まる。ホテル、モーテルは園内外に多いが、人気のあるところは早い予約が必要だ。
■下記の人気ホテルはGlacier Park Inc. (602-207-6000)が運営しており、一括して予約を受けてくれる。
●Glacier Park Hotel :イーストグレイシャー駅前、園内観光の拠点になっている。($120-$200)
●Lake McDonald Lodge:公園の西口、マクドナルド湖の湖岸にある静かな環境。キャンプ場も近くにある。($80-$130)
●Many Glacier Hotel:湖のほとりに建つ、スイス風の園内最大ホテル。($80-$120)
●Swiftcurrent Moter Inn:メニーグレイシャーロードの突き当たりのリーズナブルなロッジ、バスなしキャビンもある。($35-$55, Room $70-$90)
●Prince of Wales Hotel:カナダ側のウォータートン公園にあり、美しさもロケーションもナンバーワン。一度は泊まってみたくなるホテルだ。湖を望む洒落たレストランも、テニス、ゴルフコースも揃ったリゾートホテル。(カナダ$180-$350)
*公園内には3か所のビジターセンターがあり、いろんなツアーがあるので、自分のスケジュールに合わせてパークレンジャーに相談するのがいい。車で回っても十分堪能できるが、氷河の山を見ながら歩くハイキングは格別だ。
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