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エルパソから国道10号線を東へ、そして90号線に入ると道路と平行してユニオンパシフィック鉄道が走っている。果てしなく続く荒野を長い貨車を引いた貨物列車と走っていると、時間に追われて慌ただしく過ぎ行く現実をしばし忘れさせてくれる。列車は思い出したように時たま汽笛を鳴らし、それは一人旅のボクに「人生は長い、ゆっくり行こうぜ」と語りかけているようだった。
アメリカで2番目に大きな州テキサス(一番はアラスカ)。その地にあるビッグベンド国立公園は、まさにその広大さを象徴するかのごとく大きく、そして遠い。一番近い空港エルパソからでも320マイル(512キロ)、サンアントニオからだと400マイル(640キロ)、車でぶっ飛ばしても一日はかかる距離だ。 この国立公園はテキサン(テキサス人)と同じく、初めての客にはとても愛想が悪 い。「勝手に見物してくれ」と言わんばかりで、車で広い公園内をドライブしても、なかなか目的の場所まで辿り着けない。ボクはビジターセンターで買った絵葉書の写真が頭にこびり付き、どうしてもその同じ場所から写真を撮りたくて捜しまわったのだが、翌日一日かけてもその場所を捜せなかった。それは夕陽に真っ赤に染まったシエラ・デル・カルメンの写真だった。 ビッグベンド国立公園はメキシコと国境を接し、その境界線をリオ・グランデ川が流れている。その東側、リオグランデ・ビレッジの遥か後方のシエラ・デル・カルメンは、高く堂々とそびえていた。
次の日、ボクはチソス山の朝日を見るためにロストマイン・トレイルに登った。ここの山頂までは7325フィート(約2233メートル)、トレイルの始発点から片道2時間の道程だ。サウスリムに射す朝日を見るためには、もちろん真っ暗なうちに出発しなければならない。いつものことながらペンライトの明かりを頼りに登る初めての山道では、ちょっとした風のざわめきにも恐怖心があおられる。「熊に注意」の立て看板がそれを助長した。 ビッグベンド国立公園には山があり、川が流れ、砂漠があり、それぞれにいろんな楽しみ方があるが、ボクにとって極め付けは、リオグランデ川に湧き出る温泉だった。この露天風呂はリオグランデ・ビレッジの近くにあって、昼間はキャンプしている人たちが三々五々集まり、憩いの場になっていた。山から下りて温泉場にやって来ると、川に沿って切り立つ小高い丘が気になった。
長い間の思い入れが叶い一人温泉に浸ると、とたんに疲れが押し寄せてきた。昼間の人混みは消え、滔々と流れるリオ・グランデ川の水音が子守唄みたいに心地よかった。
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