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私のアメリカを探して 20
「手荒いザトウ鯨の歓迎」
キーナイフィーヨルド国立公園
Kenai Fjords NP, Alaska

ホルゲート氷河
グレイシアブルーの氷魂が真っ黒い海にごう音とともに沈む迫力はまるで映画の中の一こまみたいに脳裏に刻まれいつまでたっても色褪せない。
キーナイ半島の南東、山が直接海に落ち込んでできるフィヨルドの独特の景観と野生動物たちの宝庫になっているのが、キーナイ・フィヨルド国立公園だ。

白頭鷲 |
ここの氷河は巨大なハーディング氷原から流れ出した氷が8つの氷河となり海に流れ込んで出来ている。海に直接落ち込む山脈はかつては氷河におおわれていたところで、深く入り込んだフィヨルドは時には霧に覆われ、晴れた日には鏡のような海面に氷河を美しく反射させる。
湾内には多くの野生動物が生息し、アンカレッジから近いこともありここの東側に位置するプリンス・ウイリアム湾とともにアラスカでも有数の観光地となっている。
キーナイ・フィヨルド国立公園のゲートシティ、スワードからは多くの氷河クルーズ船が出ているが、ボクはバルディーズからウィティアまで運行しているフェリーに乗りまずプリンス・ウイリアム湾の氷河を見てから南のスワードまで行くことにした。
車ごと乗船出来るこの航路は大変人気が高くて、朝7時の就航なのに早朝から桟橋は車の列で膨れ上がっていた。空には今にも泣き出しそうな雨雲が低くたれ込め、氷河に引っ掛かっている。晴れたらすぐ目の前にコロンビア氷河が見えるはずだったが、暗い海にはアイスバーンが浮かんでいるだけで、時々波間にプカリ、プカリと浮かぶ愛敬もののラッコがこちらを眺めているだけだった。
船内で暖をとるために椅子に腰掛けたとたん強い睡魔が襲ってきて、ボクはそのまま深い眠りに落ちていった。
ふと夢の中で1989年にこの海で起きた、史上最悪のタンカー事故といわれたエクソン・バルディーズ号の原油流出事故の光景が蘇ってきた。真っ黒い油にまみれたラッコや小動物の哀れな姿が目の前に現れてきた。いまこの海はまたもとの美しい静けさを取りもどし、そして月日とともにあの忌まわしい事故も人々の脳裏から風化されてしまうのであろうか?
やがて船は終着港ウイッティアに到着、そこからスワードへと向かった。

アシカの昼寝 |
スワードは雪をかぶったチュガッチ山脈を水面にうつす、リザレクション湾に面した静かな港町だ。ダウンタウンには20世紀初頭の古い建物が残り、ゴールドラッシュ時代を彷佛させる。
夏のこの時期は氷河クルーズや、釣り客でどこもかしこも賑わっていた。ボクは湾に面した民宿にチェックインするや、すぐにシーフードレストランに直行した。アラスカにきて以来、食べよう、食べようと思いながら食べ損なっていたキングサーモンを腹一杯食べるために、民宿の主人ジョンに教わった食べ放題のレストランのドアを開けた。ビールを空きっ腹に流し込み、バーベキューソースで焼かれたサーモンを片っ端から口の中に放り込む。隣のテーブルの女性客があきれ顔でボクの顔を覗き込んだので途中で止めたが、ここの捕れたてのキングサーモンはしこしこと口当たりが良く、今までどこで食べたものより美味しかった。
朝食のあとジョンが操縦する小さな漁船でボクたちはキーナイ・フィヨルド国立公園のクルーズへと出発した。霧のリザレクション湾をかき分けるように進むと、やがて行く手にはフィヨルドの特徴である切り立った断崖が海中に突き刺さり、何百という海鳥が頭上を飛び交っていく。ジョンはボートをうまく操り切り立った入り江を練りながら、アシカやパフィン(ツノメドリ)のいるスポットに近づいてくれた。目的地のホルゲート氷河で一服すると、ドーンというごう音とともに崩れ落ちた氷魂が海に沈んで行く。あちこちのクルーズ船から歓声が巻き起こる一瞬だ。

ザトウ鯨 |
そしてクルーズのハイライト鯨ウオッチングが始まる。
それぞれボートの船長達は無線で連絡を取りあって鯨を探す。ザトウ鯨の群れはすぐに見つかった。すでに何隻かのボートが周りにたむろしブリーティング(ジャンプ)に大きな歓声が上がっている。
ボクたちのボートも鯨の群れの中に入っていった。
シューッ!シューッ!と潮を吹く音。尾ひれを反転させて水中に没する凄まじい迫力。
その時ひときわ大きな鯨が潮を吹いたかと思うと、潜水艦みたいにずんずんとボクらの小さなボートに近づいて来た。「ぶつかる!」とおもったその瞬間大きな黒い固まりは急潜行、ボートの下をくぐり抜けていった。ボクたち人間がここでは鯨たちにからかわれているのだった。

ホルゲート氷河 |
行き方:
Kenai Fjords National Park(907-224-3175)
アンカレッジからいろんなパッケージツアーが出ているので、時間のない人には向いている。
バス(スワード・バスライン 224-3608)や鉄道(800-544-0552)を利用できるが、レンターカーを借りてキーナイ半島と西南アラスカをドライブすれば楽しみは倍加する。
氷河クルーズの発着点スワード(Seward)にはモーテル、レストラン、それに旅行代理店もあるので、ここから一日クルーズも利用出来る。夏場は混むので予約が必要
(ビジターセンター 907-224-8051、 www.seward.net/chamber)
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