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私のアメリカを探して 30
「湖の呪い」
インヨー国立森林公園、カリフォルニア州
Mono Lake、Inyo National forest, California
Mono Lake south tufa area

カリフォルニア州を南北に縦断するシエラネバダ山脈は、米国本土で一番高い(アラスカをのぞく)マウント・ホイットニー(Mt. Whitney、4,418m)を頂点に雪を冠った4000メートル級の山々が連なっている。その中にはヨセミテをはじめ、レッドウッドやセコイア・キングスなど米国の代表的な国立公園や森林公園を有し、 自然主義者で作家のジョン・ミュアーが創始したウイルダネスクラブ“シエラクラブ”もここから始まった。

このインヨー国立森林公園の中にあるモノ・ベイスン(盆地)はヨセミテ国立公園のすぐ西側に位置し、西側のシエラネバダ山脈と東側のロッキー山脈に挟まれ、ネバダ砂漠からの熱気とシエラネバダ山脈からの冷たい空気が入り交じった独特の乾いた気候を作り出している。この中にある湖はモノ・レイクと呼ばれ湖の底から出てきた不思議な石灰岩のフォーメーションに、近年世界中から見学客が訪れるようになった。


シエラネバダ山脈の東側を走る国道395号は、美しい山並みの風景を楽しませてくれるハイウエーだ。この395線をネバダ州のレノからロスアンジェルスへと南下すると、途中の街道沿いには画廊や洒落たレストランのある小さな町が点在し、疲れた旅に憩いを与えてくれる。東側からヨセミテ国立公園へアクセスできるのはこの395号線から、夏の間だけオープンしている120号線だけで、その下に位置するセコイア&キングス・キャニオン国立公園へは東側からアクセスする道路はなく、シエラ山脈の西側を走る国道5号線のフレスノ市まで戻らなければならない。文字どうりカリフォルニアの広大なバックカントリーが広がっている。モノ・レイクの人気はカメラマンたちによって広められたといってもよい。湖底から出てきたタファと呼ばれる石灰岩の固まりは、まるで自然が作り出した彫刻みたいで格好の写真のモチーフとなったのである。


このモノ・レイクの名前の由来は以前ここに住んでいたネイティブ・アメリカンの呼び名から始まり、76万年前に出来たといわれる北米で一番古い湖は、海水の10パーセント以上の濃度をもち、湖底から湧き出る水が炭酸と化学変化を起こし固まって、今でも石灰岩の結晶を作り出している。湖水はアルカリ性のため普通の魚は生息できず、生物は小さなエビの一種が生息するだけで、春先になるとアルカリ・ハエが大発生して岸辺を真っ黒に埋め尽くす。そして渡り鳥が羽を休める中継点でもある。

しかしのどかだった湖は、1941年、ロスアンジェルス市の人口増加のためにカリフォルニア州がモノ湖から給水を始めると、湖は乾涸び湖底からこの不思議な形の石灰岩の固まりが出現してきた。この石灰岩のフォーメンションはそれまで湖底でひっそりと沈黙を守っていた湖の精霊たちが人間たちによって白日の下剥ぎだされ、悲痛な叫びを上げているようにも見える。そして人々が湖の保護に気づき、給水をやめたのは40年も経ってからで、しかし一度干上がった湖はそう容易には元に戻ることはできない。

ボクは朝日の写真を撮るために真っ暗いうちに起きだして湖へと向かった。暗黒と静寂の中、まるで墓場を歩いているような不安な気持ちに襲われると、いきなり足下の薮から夜鷹が飛び立った。 静寂をやぶる突然の羽ばたきに、心臓は胸を突き破ってとびだすのではないかと思うくらい高鳴り、恐怖心に足はひきつった。薄明かりに目をすかすと石灰岩の固まりが、まるで黒い湖にたたずむ骸骨たちに見えてきた。そしてその物言わぬ何百の眼がボクの背中を射ぬき、人間たちの非業を攻めているような気がした。やがて東の空が赤く染まってくると、まるで血の色みたいな朝焼けが始まった。こんなどぎつい色の朝焼けはみたことがなかった。湖が人間の非業を呪っているのだろうか。

自然の営みは時々不可思議な現象を見せる。人間の行き過ぎたおごりに対する忠告かもしれない。

行き方:
The Mono Basin Visitor’s Center
P.O. Box 429, Lee Vining, CA 93541
Phone: 760-873-2408
www.fs.fed.us/r5/inyo/
入園料はボードウオークのあるサウス・タファエリアだけ3ドル。

ロスアンジェルスから国道395線を北へ約250マイル、ネバダ州のレノから120マイル南。ヨセミテ国立公園の真東に位置する。

宿泊:Lee Viningには数件のモーテルとレストランがあるので週末以外は予約の必要はない。


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