|
> エッセイメニュー 私のアメリカを探して 32
「偉大なる山、マッキンリー」 デナリ国立公園、アラスカ Denali National Park, Alaska
アラスカには8カ所の国立公園があるが、中でも一番の人気を誇るのがデナリ国立公園だ。“デナリ”とはネイティブアメリカンのアサバスカン族による「偉大なるもの」の意味。
1917年、動物たちを乱獲から保護するために第25代大統領、ウイリアム マッキンリーの名前をとってマッキンリー国立公園が制定されたが、1980年当時の大統領ジミー カータ氏によって新たに広大な動物保護区が加えられ、名前もデナリ国立公園となった。
この公園の人気の理由は地理的にもアンカレッジとフェアバンクスのほぼ中間に位置しアラスカでは比較的アクセスに便利なことがあげられるが、何よりも多くの動物たちをみられるのと、北半球で一番高い山、標高6194メートルのマッキンリー山を擁することだ。ラストフロンティアと呼ばれたアラスカはもう昔の物語、デナリを訪れる人々の数は30年前に比べ1000倍に膨れ上がり大型バスが観光客を送り込んでる。 公園の面積は、日本だと四国、米国ではマサチューセッツ州とほぼ同じ大きさに匹敵するが、しかし園内にはたった一本、全長89マイルの未舗装の道路が走っているだけである。許可された以外の入園者の車の乗り入れは禁止されており、シャトルバスだけが広い公園を移動する手段になっている。
ここでは「人間は自然の侵入者である」という基本的考えが貫かれており、人間が入り込むことによって起こる様々な自然破壊を最小限に食い止めているのである。
だからアメリカのほかの国立公園に比べて規制が厳しく窮屈感は否めないが、しかし雄大なマッキンリー山を中心に広がる大自然の中で、野生のままに生活するグリズリーや、ム−ス、オオカミたちを保護し、出会える喜びにはかえられない。
そんなデナリを楽しむのはキャンプが一番だ。園内には7カ所のキャンプ場があるが、その中でも一番人気はシャトルバスの終点にある公園内で一番美しいといわれるワンダーレイクキャンプ場である。ここから眺めるマッキンリー山は息をのむ美しさと迫力で迫ってくる。
日本人にとってマッキンリー山にはもう一つ忘れられない思い出がある。それはマッターホルーン単独登頂や犬ゾリでの北極圏単独行などの冒険家、植村直己さんがこの山で遭難して眠っていることだ。
1970年8月、夏場の単独登頂に成功した植村さんは1984年2月、これまで人間が誰も果たしたことのできなかった厳冬期の単独登頂に挑戦した。しかし同13日最後の無線交信の後消息を絶ったまま遺体はいまだ発見されていない。
厳冬期のマッキンリー山は、北極圏の影響で急激な気温低下と強風でマイナス100度近くなることも、登頂はエベレスト山よりももっと過酷な条件になるといわれている。反対に夏のマッキンリー山は乙女みたいにとても気まぐれだ。7月8月の観光シーズンピーク時は雲の中に隠れてほとんど顔を見せてくれないのである。だから短い滞在中にマッキンリー山の頂上が拝めたらとてもラッキーといえる。
> エッセイメニュー |