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「冬のヨセミテ」
ヨセミテ国立公園
Yosemite National Park、California

Yosemite National Park
ヨセミテ・ナショナルパーク トンネルビューからの絶景

ナショナルパークの写真を撮りはじめてからも、特にヨセミテには思い入れが強い。それは風景写真をやるものなら誰もが尊敬し、そして少しでも近づきたいと願ってやまない、あのアンセル・アダムス大先生がライフワークとして取り組んだフィールドだからだ。彼の白黒写真をどれだけ長いあいだ眺めてはため息をついたかわからない。そのヨセミテに、もう3回は足を運んだ。それも、どうしてか冬ばかりだ。

サンフランシスコからストックトンを抜けて120号線に入ると、一面サクランボの畑が続く。甘酸っぱい満開の林を抜けると、やがて道はなだらかな丘陵地帯に入り、そして雪の残るヨセミテへと続く。雪の状態ではタイヤにチェーンを巻かなければならないから少々厄介だ。
そして、トンネルを抜けてまず飛び込んでくる風景が、左にエルキャピタン、右にブライダルベイルの滝しぶき、そして中央にハーフドームを望むあの絶景だ。人々はまずここで車をとめて、自分が神秘の世界に足を踏み入れたことを確認する。
はじめてのヨセミテ行で、私は運良くも雪が残るトンネルビューに辿り着いた。先ほどまでの眠気は吹っ飛び、カメラをセットするやシャッターを切りまくった。
そのとき、誰かが背中をそっと気兼ねしながらたたくのに気がついた。なんだろう、と振り返ると、そこには世話になっているある会社の社長婦人が立っておられた。日本からのお客様をサンフランシスコからの日帰り観光バスで案内されての途中で私を見つけられたのだ。お互いに「なんで?」「ここで?」と笑いあったが、しかし私は睡眠不足のヒゲ面で、大いに恐縮してしまったのを思い出す。知り合いに会ったのは、後にも先にもこれが初めてだったが、ヨセミテは交通の便に恵まれ、公園内に泊まらなくても簡単に日帰りでやって来れるのだ。

コヨーテが出迎えてくれた冬のヨセミテ

 

冬のヨセミテでは、しばしば予期しない動物たちの歓迎に出会う。
観光客の多い夏場は人目を避けて出てこない彼らも、エサの少ない冬場はすぐ手の届きそうなそばまで寄ってくるのだ。わたしはこのコヨーテ(写真)のために、ナショナルパークの掟をひとつ破ってしまった。それは「動物にエサを与えてはならない」というものだ。
私が投げたハム・サンドウィッチを一口で飲み込んだこのコヨーテは、しばらく私のそばから離れなかった。彼は決して私に友情を感じたのではなく、単にもう一切れのハムが欲しかっただけなのに、でも私はとてもうれしかった。

私は冬のヨセミテに魅入られたジョン・ピアナビラという男を知っている。大男のジョンは、ランドクルーザーで毎年2月の末にサンタクルーズからやって来る。ジョンはプロのカメラマンではないが、車の屋根には大型のジィッオの三脚を積んで、どこから見ても堂々たるプロのいでたちだ。
ジョンの本業は建築屋だ。工事現場で金をためてヨセミテにやって来るのである。
ジョンにははっきりした写真撮影の目的があった。それは2月の末の1週間だけ、角度によって日没の太陽がエルキャピタンに反射して流れ落ちる雪解け水を黄金に染めるのだ。その瞬間をとらえたある雑誌の写真がジョンの撮影意欲を駆り立てた。
しかしヨセミテはときには意地悪だ。日没には決まって霧をつくり、カメラマンのひそかな願いを打ち砕く。昨年は私もジョンに付き合い日没を待ったが、しかし太陽は最後まで微笑んでくれなかった。
ジョンから便りが届いた。「今年も2月の末1週間ヨセミテロッジを予約した」と。


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