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大人たちの醜い姿にくらべてなんとも愛くるしいその姿に、子供たちの周りにはいつもカメラの行列ができる。母親は草を食むのに夢中だが、しっかりと子供の行動を監視していて、人間がそばに近づき過ぎるとすぐにかん高い声で呼びつける。そんな赤ん坊バイソンに昨年生まれた兄貴分のバイソンが、自然の掟を教えている。「人間達を信用しちゃだめだよ」とでも言っているのか、赤ん坊バイソンはすぐに群れの中に入ってしまった。まるで動物一家の幼稚園でも眺めているかのごとく、平和な愛くるしい姿に時のたつのを忘れてしまう春の一日だった。 イエローストーン国立公園へは東西南北5つの入り口から入ることができるが、私は南のジャクソン(ワイオミング州)からの入園が一番すきだ。ウェストイエローストーン(モンタナ州)の空港は夏場しかオープンしていないので、一年中オープンしているジャクソン空港が少々遠くても便利ということもあるが、それよりもグランドティートン国立公園の雪を被った山並を見ながら車で北上すると、まるでヨーロッパアルプスにでも来たみたいで楽しみも倍加する。それにジャクソンホールの町にはアウトドア用品の店から、アートギャラリー、レストラン、カメラ店とすべてが揃っているので、ここで必要なものを補充し、そしてギャラリーを覗いて写真のイメージを作るのにも役立つからである。今度のイエローストーンは3度目の旅となった。先の2回はいずれも夏場で、それこそ人ごみに疲れはてて、じっくりと写真どころではなかった。アメリカの国立公園でも一番人気のあるイエローストーンの夏は人と車の行列で、前もって周到な準備で出かけなければわざわざ疲れに行くようなことになってしまう。パーキングを探すのも一苦労だし、レストランで食事をするにも2時間待ちは覚悟しなければならない。イエローストーンには大きくわけて3つの人気スポットがある。80分おきに蒸気を吹き上げる間欠泉で有名なOld Faithful、鮮やかな虹色の大温泉Mammoth Hot Springs、そしてイエローストーン河の大瀑布で有名なGrand Canyon of the Yellowstoneだ。それに野性の動物たちが加わりアメリカで最初に指定された国立公園として規模、魅力すべてにわたってこれほど自然を堪能できるところはない。いつも飛び込みの私の旅だが今回は運良くもオールドフェイスフル・インに泊まることが出来た。
オールドフェイスフルはイエローストンの中心で、ホテルは冬場もスキー客用にオープンしている。すぐ前の広場では有名な間欠泉を見ようと噴火の時間になると人々が広場に大きな輪を作る。私はバイソンの写真を撮るために日の出と共に起き出してグランド・ループ・ロードをドライブした。動物は朝と夕方が最も活動する時間帯で、昼間はほとんど昼寝している。深い霧が立ちこめて強い朝の光がスポット状に反射する。Gibbon Riveの近くで運良く子供をつれた群れを発見した。私は車をとめて望遠レンズを掴んで分からないように接近した。しかしすぐに群れのボスに見つかった。ある程度の距離を保っていると何もないが、少しでも近づき過ぎるとすぐに威嚇する。可愛い親子の姿を白い温泉の蒸気を入れて撮りたかった。生まれたばかりの赤ん坊はすぐに疲れて辺りかまわず寝込んでしまう。草を食べるのに夢中な母親だったが私の姿を見つけるとすぐに子供のそばに近づき警戒体制をとった。私は気が引けてもうこれ以上この家族の邪魔をすることができなかた。バイソンの群れが作った泥んこ道を引き返しながら何度も膝まで穴にはまり、ブーツもパンツも泥だらけとなった。 ようやくループ道路まで辿り着き、ギボン川の身を切るような冷たい雪解け水で泥んこのブーツを洗っていると、目新しい看板が目についた。「この辺りでは最近冬眠から覚めたクマが目撃されており、バイソンの子供が殺されています。人間は絶対にこの地区に立ち入らないことーーーー」私の背筋に雪解け水より冷たい恐怖がはしった。
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